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名古屋地方裁判所 平成2年(ワ)1357号 判決

原告

谷口永里子

被告

長谷川龍貴

主文

一  被告は、原告に対し、金五七万五三五五円及びこれに対する平成二年五月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一一三万九一九〇円及びこれに対する平成二年五月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が左記一1の交通事故の発生を理由に、被告に対し民法七〇九条により損害賠償請求をする事案である。

一  争いのない事実

1  交通事故

(一) 日時 平成元年一〇月二八日午前四時ころ

(二) 場所 千種区宮根台一―五―二五

(三) 加害車両 被告運転の普通乗用自動車(名古屋三三ろ八四四六)

(四) 被害車両 原告所有の普通乗用自動車(名古屋七九そ五七六四)

(五) 態様 加害車両が駐車中の被害車両に追突した。

2  責任原因

被告には、前方注視義務を怠つた過失がある。

二  争点 被告は、損害額を争う。

第三争点に対する判断(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)

一  損害額

1  車両修理代(請求六六万九五一〇円)四九万八三五五円乙第一及び第二号証、乙第四ないし第六号証、証人太田泰久の証言及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、本件事故により損傷した被害車両の修理を株式会社北川モータース(以下「北川モータース」という。)に修理を依頼し、北川モータースは、右修理を株式会社サクラ自動車工業所(以下「サクラ自動車」という。)に下請けさせた。ところで、右修理に先立ち、被告が保険契約を締結している同和火災海上保険株式会社から本件事故による損害の調査を依頼されたアジャスター太田泰久(以下「太田」という。)は、北川モータースに搬入された被害者両を見て損傷状況を確認するとともにサクラ自動車との間において被害車両の修理費用について協議した結果、修理着手前の修理費見積金額として四一万八三五〇円を合意した。

(二) ところが、修理後、サクラ自動車から太田に対して送付されてきた見積書においては、右協議の際には修理対象とされていなかつた部分について修理が行われたり惑いは板金修理可能とされていた修理箇所について部品交換が行われた結果、修理費額は六六万九五一〇円と変更されていた。太田が右変更についてサクラ自動車に問い合わせたところ、北川モータースの指示によるものであるとの回答を得たため、太田は北川モータースに追加の範囲について確認したところ、北川モータースから修理着手前の見積に追加して交換した部品の資料が送られてきたため、右資料とサクラ自動車の見積を照合し、右資料に掲載されていた部品を当初見積に追加したものとして修理費額を算出したところ、四九万八三五五円となることが明らかとなつた。

右事実によれば、修理着手前の修理見積金額は四一万八三五〇円であつたことが認められるが、修理の過程で事前の見積より修理箇所を追加する必要が生じることは否定できず、本件事故と相当因果関係にある車両修理代は、元請である北川モータースの指示により追加された部品の代金を当初見積に加えた額である四九万八三五五円と認めるのが相当である。

2  代車料(請求四六万九六八〇円) 七万七〇〇〇円

原告本人尋問の結果及びこれにより成立を認める甲第二号証によれば、原告は平成元年一一月二日から平成二年一月二七日まで及び平成二年一月三一日から同年二月三日までの合計八四日間、代車を借り受け、その費用として合計四六万九六八〇円の債務を負担したことが認められる。しかしながら、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、当初、原告が被告に対し、車両の買い替えを要求して交渉し、被害車両の修理の着手が遅れたため代車の借り受け期間が長くなつたこと、実際に修理に要した期間は二週間程度であつたことが認められる。これらの点からすれば、本件事故と相当因果関係にある代車料は、一日当たり五五〇〇円、合計七万七〇〇〇円(一四日分)と認めるのが相当である。

3  評価損(請求一五万円)

被害車両につき評価損を認めるに足りる証拠はない。

4  平成元年一〇月二九日から同年一一月一日までの四日間被害車両を使用できなかつたことによる損害(請求二万円)

右損害を認めるに足りる証拠はない。

二  結論

以上によれば。原告の請求は、五七万五三五五円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成二年五月一九日から支払済みまで年五分の割合による遅廷損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 深見玲子)

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